薪ストーブで後悔する理由(その1)

「薪ストーブを導入するかしないか」判断が難しい理由

 ポカポカとした暖かさや、ゆらめく炎を眺める贅沢さ、いかにも美味しそうな料理……木という手に馴染む、それだけでもインテリアになるナチュラルな素材である薪を燃料にした薪ストーブ。楽しくて、豊かに暮らすことを夢見て、多くの人が導入を考えます。

 しかし、そもそも百万円くらいかかる?とか高いし、あれは大変だという話も普通に聞きます。そこで「実際のところ」を知ろうと情報を探ると、「導入したけど、ほとんど使えない」とか少し探せばポロポロ出てきます。一方で、いかにも簡単に、掘っ立て小屋のようなところで薪ストーブを楽しんでいる人もいるようです。一体どれが「薪ストーブ」として正しいのでしょう……??

 今の情報過多の時代において、薪ストーブは、自動車のような分類もなされていないために「本当に知りたい」ことにたどり着くのが難しい分野の代表例です。その結果、失敗に終わる例も、実際に極めて多くあります。

 そこで、上記のような「薪ストーブに詳しくない普通の人」を想定し、役に立つ情報、考え方を整理しながら提供しようというのが本サイトです。

 整理のために、まず、薪ストーブに限らない大原則として「特別な場面だけで使う、趣味的なもの」という特殊用途が、世の中の製品に存在するということを理解する必要があります。その場合「どんなもの」でも使えないわけでもありません。

 例えば、かつての高級カメラのように、高級感のある機械を所有して大切に保管していて、とっておきの場面でちょっと使うだけで満足できるような製品なら、それはそれで問題ないと言えるでしょう。実は薪ストーブの大勢は、様々な面からみて、この特殊用途に該当します。

 すなわち薪ストーブは、デジカメと違ってアナログで陳腐化しないために、そういう「重厚なインテリアとして、普段は使わなくても、使った時の高いスペックや、高級感で満足させるもの」として販売されていることが、かなり普通です。

 けど、実際に導入する側からすれば、例えば100万円からの投資、場所も食うし、床補強だとかも要るかもしれない。それが「特別な場面だけで使える」「豊かな趣味」では、なんとも費用対効果というか、現実の暮らしを無視したような話です。特殊用途なんかにそんなお金は使えません。

 「普通の感覚」では、投資する以上、それに見合う効果がある、つまり「暮らしの中で実際に使えるもの」でないと困る、最低でも週末、できれば毎日の主暖房にできないのか??――そういう視点があるからこそ、具体的な情報を求めにいくし、情報過多の中で必要な情報にたどり着くのが難しいのです。

 そこでこれから、そういう「普通の人の現実的な視点」から、まず、薪ストーブのデメリット、実際に使えなくなる可能性を、具体的に検証してみましょう。基本的な部分から解きほぐしていくために、とても長い記事になりますが、お読み頂いて損はないと思います。よろしければ最後までお付き合いくださいませ。

主暖房としては、普通の人にはムリ???

 この記事を書いている私、愛研大屋は、実際に薪ストーブで暮らして、薪ストーブを設置販売することを仕事としている「中の人」です。自分の実体験と多くの皆さんから聞いた話に基づいて、先に結論を言ってしまいますと、「普通の薪ストーブ」を、普通の人が「主暖房として」利用して暮らすのは、基本的に、無理じゃないかと感じます。それは、大きく言えば次のような3つの理由を根拠としています。

 以下、それぞれ詳細かつ具体的に説明します。

薪の調達を中心とする手間や、ランニングコストがかかりすぎる

 どんなに素晴らしい暖房も、エネルギー源があって初めて機能します。では、比較的よくある大きさ、よくある出力の「普通の薪ストーブ」で部屋を暖めようとすると、どのくらいの薪を使うのでしょう??―――

 導入を検討中の皆さんが、薪について知らないのは当然のことです。やったことないですし、ネットを調べても「色んなケースがありますが、ざっくりこんなもの」と根拠を含めて具体的な数字を書いてある情報は珍しいです。そこで、かつての私もそうでしたが「なんとかなるだろう」と甘く考えて導入しようとしますが……

 薪がノウハウもなしになんとかなるとか、甘いです。実際に導入して一番皆さんが大変な思いをして、結局使わなくなる一番の理由が薪です。そこでこの一連の記事では、この薪問題から議論をスタートします。

 考える根拠として最初に言いますと、暖房として使うために必要な薪の量について、『よくある普通の薪ストーブ』なら稼働1時間あたりで平均2kgとか、少なくとも、そのくらいの量の薪はざっくり言って必要です。

 「2kg」の算出方法、根拠はこちらの関連記事【薪の使用量(消費量)を、薪ストーブのカタログから読み取る】にて詳しく述べてあります。応用が効きますので、よろしければご覧になってください。大切なのは、薪の燃料としての価値は、体積ではなく、重さ(と乾燥具合)で決まるということです。

 しかし1時間あたり2kgというのは、実際にはかなり「楽観的な」見通しです。なぜなら、重量150kgとかの鉄の塊(普通の薪ストーブ本体)が多少なりとも暖かい状態になってから、それを維持する場合の話だからです。

 実際の暮らしでは、完全に冷えた状態から薪ストーブが暖かくするような立ち上げの場面が多くなります。あるいはもっと大型のストーブであれば、実際には1時間あたり5kgとか必要となることも、別に珍しくありません。

 ここで、普通の方にとってすでに未知のゾーンになるのが、「1kgの薪って、どのくらいの量なの??」という問題です。薪と言えば、割って乾かしてある場合が多いし、ホームセンターなどでも目にする機会があると思いますので、この記事ではそれで議論します。

 1kgの薪ってどのどのくらいの量か?というと、厳密には木の種類によります。例えば普通の「薪ストーブ」で一般に使われるのは、スギやツーバイフォー材のような「針葉樹」ではなく、重い「広葉樹」が中心です。同じ重さでも、針葉樹よりも広葉樹の方が「コンパクト」になります。

 そして広葉樹にもいろいろあります。そこでこの写真、ナラですが、いわゆる「雑木ミックス」のような平均的と考えられるよりも、やや重いめのしっかり詰まった密度の「コンパクトな」材による、実際の1kgの薪です。

ナラの薪の写真 ボトルとの比較

 こういう、やや重いめの薪を使って「主暖房として」薪ストーブを利用するとしましょう。『よくある普通の薪ストーブ』だと、立ち上がり時間かかって大変なのです(後述)。そこでせっかく1回焚いたら5時間くらい暖まりたいと仮定します。そこで単純に5時間ずつ朝晩2回で合計10時間、1日20kg使うと仮定します。

 この仮定の場合、実際には暖かさを感じられる時間は5時間でなく数時間だったりします。そして冷えた状態から暖かくなるまで間には、1時間あたり2kgよりもっと多くの薪を消費します。ですので甘い想定です。

 結果的に主暖房として『よくある普通の薪ストーブ』だけで暮らそうとすると、薪の消費量は1日20kg以上に多くなることはあっても少なくなることはありません。しかし、ここでは、とりあえず1日20kgで話を進めます。

 では、この写真の1kgが20倍集まった薪がどんな量か、それをもう少し、具多的なイメージとして持って頂けるように説明します。家庭でのハンドリングを考えるには、宅急便と同じく重さでなくて、体積が好都合です。モノの置き場所も、たいがい重さではなく体積、しかも「見かけ体積」ですから。

 見かけ体積は、薪と薪の隙間も含めて考える必要があります。もちろん細かく割るほど隙間は少なくなりますが、普通によくある割り方は隙間はかなり多くなり、隙間のない状態の1.6倍程度になると言われます。先ほどの1kgの薪ですと、隙間を含む見かけとしては、だいたいこのくらいの底面積、直径76ミリ程度の円になります。

38ミリ半径薪

 で、これが長さ33センチですので、見かけ体積を計算しますとほぼ1500cc、つまり1.5リットルペットボトル1本の体積で、薪が1kgです(比重0.67です。なお本記事では便宜上、比重0.6として通常は換算していきます)。1.5リットルのペットボトル10本分を1回に燃やすわけです(厳密にイメージするには四角の断面のものが良いですが……)。

 1回に燃やす薪の量って、なんとなく、スーパーの買い物かごに入れるならカゴ1つぶんくらいになりそうってイメージ頂けますでしょうか。これが『よくある普通の薪ストーブ』だけで暮らすための最低の必要量です。繰り返しになりますが、実際には、これよりも基本的に増える方向になります。

 そんな具合で、主暖房なら1日あたり買い物かご2つぶん、20kg使うわけです。ちょうどこちらのサイト【薪ストーブ、一日に必要な薪の量はどのくらいか - ともさんのHP】に、一日に使う分が写真で掲載されていますが……一冬を考えたらどのくらいになるでしょう。5か月間150日焚くとすると3000kgです。つまり3000本ものペットボトルです。

 これが、もし300本なら、ぎっしりで6本入った比較的コンパクトな箱が50箱か……とか、イメージつくかもしれませんが、実際には、6本入りの箱がワンシーズンで500箱は必要になります。

 膨大な量ですよね?……置いておくにはちょっと想像つかないと思います。そこで、そのまま使える状態の薪を、都度買ってきて使うなら、保管スペース的には大きな問題はありません。安いところを探せば可能かなと思いますが軽トラック一杯2万円で買えたとしましょう。割った薪なら軽トラ一杯で400kgくらいと思います。

 kg当たり50円です。1日に20kg使えば1000円。1ヶ月で3万円。ワンシーズンで15万円。暖房代としてはなかなか強烈なお値段ですが、それでもホームセンターで見かける薪(一束では、だいたい8キロくらいが多いんじゃないかと思います)を基準にすれば、薪が10kg、買物カゴ1杯で500円なら充分安いということはお分かりいただけると思いますので、一度お確かめになってみてください。

 そこで、控えめに暮らしても暖房代が1ヶ月3万円もかかってはたまらないと、薪を買ってくるのではなく自分自身で準備しようと、普通はそうなります。原木というのですが、もとの木材ならタダで手に入る可能性も高いです。でも、そうすると今度は保管スペースの問題が生じます。

薪棚

 これは、我が家の薪棚のひとつですが、これだけ積んで見かけ体積0.9立方メートルです(我が家の薪は33センチ程度が基調なのです)。重さにしてざっくり500kg(我が家は針葉樹交じりなので比重0.6を切ると思います)、ペットボトル500本分くらいです。

 これで一冬暮らせれば全然いいのですが『よくある普通の薪ストーブ』ではそうも参りません。計算します。3000kgを見かけ比重を0.6として体積に換算すると5立方メートルです。この写真の薪棚が一冬で5個と半分、必要になる計算です(比重0.6を切っているとして計算すると、この薪棚6個が必要になります)。

 これ「本当かしら?」と思われるかもしれませんが、実際に『よくある普通の薪ストーブ』で「主暖房で」毎晩、毎朝暮らそうとすると、一冬3000kg、5立方メートルというのは、けっこう、いや、かなり控えめな数字です。

 実際の暮らしで薪ストーブを主暖房として利用した場合の薪の消費量については、近年はユーザーさんの誠実で具体的な報告がネット上に上がるようになりました。ピックアップですが報告例を示します。

 例えば、煙のことも考えて正しく高温で焚く代わりに、週末を除いて普段は夜だけ焚いて、朝は焚かない形での主暖房として年間5立方メートル程度という報告【薪ストーブシーズン2017-1018終了しました - 薪ストーブで冬眠したい】があったり、同様に基本的に夜だけで時々24時間焚かれる場合【【薪の年間使用量】薪ストーブを考えている方へ 参考にしてみてください - YouTube】で、7立方メートル程度という「はらしんちゃんねる」さんの検証動画【薪、買ったらいくら? - YouTube】があります。

 近年のみならず、昔から存在した誠実な情報も含めて、真面目なユーザーさんが上手に焚かれて、そのくらいの薪の年間使用量、消費量になる(収まる)のは、充分妥当だろうと考えられます。

 そういう個々のユーザーさんによる消費量報告は、もちろんケースバイケースで、機種によっても状況によっても違いますが、先ほどの1時間当たり平均2kgを仮定した主暖房として、朝6時に立ち上げて夜9時まで、1日15時間とか焚き続ける単純計算でも、1日30kg、150日間で4500kgという計算になります。これを隙間を含めた見かけ比重0.6とすると、7.5立方メートルとか、やはり、そういう数字になります。

 夜だけではなく一日中の主暖房としての使用だと、状況によっては、もっと多くなるのですが、これも何気ないゆえに信頼性のある報告【雪見daifukuさんのツイート午後10:26・2018年12月22日】ですが、こういう年間12立米とかの報告も、昔からの情報でも存在します。

 また行政による調査【薪ストーブ利用実態調査/環境保全研究所 - 長野県】では、『年間の薪使用量は4~10立米の世帯が多く、平均は9.0立米』と結論されております。平均で年間5400kg程度ですね。もしも購入すれば上手に買っても年間25万円とか、そういうランニングコストです。

 「暖房費」は、本質的には「そこにお金をかけても何も生まないコスト」です。そこに、毎年、それだけのお金を投じるのは、普通は無理だと私は思います。

 そこで、なんとか自前で木を集めようということになるのですが、その時、考えて頂きたいのは、木は、乾かさないと薪としては使えないということです。どのくらい乾かすかというと、一般には2年とか言われています。

 そうなると、お金を節約すべく、自分自身で薪を準備するためには、一冬で使う量の、さらに倍の量を、丸太を切って、割って、あらかじめ庭に積んでおかなければなりません。すごいスペースです。労力もすごい。

 そういうスペースや労力について、具体的にどんな感じか?というのは『楢の原木4トン(2メートルを70~80本)とミックス材と呼ばれる雑木を100本(2メートル)を薪にします。これで10~15%位は残り来年に持ち越します。』とおっしゃる、薪の年間消費量たぶん9トン、15立米程度かな?と思われるユーザーさんの報告【薪ストーブを自宅に設置してみました メリット/デメリット説明します。 - マイホーム購入プロジェクト】の後半のほうに記載がありますので、ご覧になってみて下さい。

 けど労力を嫌うなら、先ほどの話で、年間15万円~25万円にも及ぶ出費を、暖房費として覚悟しなければなりません。そしてここでは詳しく書きませんが、実際にはkgあたり50円程度の広葉樹の良質な薪を、シーズン通して安定して、都度購買し続けるのはかなり困難で、品切れとか普通なので、やはり一定量買い占めしなければ難しいです。

 さて、ここまでの薪の問題が、実際には労力&スペースを投じるか?購入費を投じるか?という違いはあれど、薪ストーブのランニングコストの中で最大の問題ですが、それに加えて「ハードとしての本体や煙突を含むシステムの性能維持」のための手間やコストという問題もあります。

 例えば、煙突掃除にせよ、本体の分解メンテナンスにせよ、依頼すれば、人件費だけでそれぞれ数万円はかかります。セットで依頼すれば年間5万円というところでしょうか。

 もし煙突掃除や分解メンテナンスを自分でやって外部への人件費を浮かせるにしても、通常の薪ストーブであれば本体は交換部品や消耗品が必要になります。色んな情報を見ていくと、数年で少なくとも3万円以上は生じるとみておいた方が良さそうです。年間に均すと1万円以上です。

 さらに、薪ストーブには寿命もあります。通常の薪ストーブを主暖房として使った場合、よほど上手に使えば、機種によれば例えば30年とかもつ場合もあるのですが、経験上、普通の人が『よくある普通の薪ストーブ』を主暖房として普段使いすれば、10年程度で、消耗品交換で済まないようなガタが来ます。本体価格が30万円だとすれば、この更新費用も年間で3万円とか「暖房のためのランニングコスト」として計上すべきかもしれません。

 ここまでまとめますと、忙しくて、それほどパワーもない人が、薪ストーブを主暖房としようとして、購入&外部依頼を中心に運用しようとすると、安くなるように、安くなるように上手に購入し、運用していったとしても、年間のランニングコストは

 薪代15万円+メンテ人件費5万円+交換部品消耗品1万円+本体の寿命3万円=24万円

 実質でざっくり月間5万円近い「暖房費」……これに耐えられる人は、普通の人には、やっぱり居ないと思います。少なくとも、私には絶対に無理です。そこで、特に薪代を中心に、自前で調達しようとしても、私にはそんなパワーはありませんし、そもそも我が家の敷地には、そんな薪を置いておけるスペースは到底ありません……

 巷の世間を見渡したとき、私よりも「すごい人」はゴロゴロいらっしゃいますが、かといって、私も「普通の人」の範疇に比べて、パワーや財力などが特段劣っているとも思えません。ですので私レベルの普通の人間の意見としては、まずこの「手間やランニングコスト」からみて、普通の人が『よくある普通の薪ストーブ』を「主暖房として」利用して暮らすのは、基本的に、無理じゃないかと考えております。

 なお、横道にそれますが、私自身は薪ストーブを「主暖房として」実際に暮らしているのですが、一言で言えば特別な薪ストーブをノウハウを伴って使っているからです。その場合の光熱費想定などを、こちらのQ&A【薪ストーブ導入に際して、よくある疑問・質問について解説します】に公開しておりますので、よろしければご覧くださいませ。

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